web3マッシュアップサービス
これまで記事にした内容の技術的な仕組みは、ブロックチェーン上にスマートコントラクトがあって、ウォレットを繋いでNFT・トークンを発行できるといった基本部分を見てきました。今回は「ReadON」アプリの仕組みを掘り下げながら、分散型アプリケーション (DAaps) について見ていきたいと思います。
「Read to Earn」の「ReadON」アプリは、web3系の情報を得るのに便利なため、ほぼ毎日利用しています。過去記事では、さらっとアプリの使い方や経済圏の構築イメージを書きましたが、今回は、外部サービスについて書きたいと思います。
見づらいと思いますが、全体図です。web3系の主要サービスがてんこ盛りです。
「ReadON」は、読むアプリです。ターゲットユーザーは、世界中のweb3を知らないインターネット利用ユーザーおよび、web3ユーザーです。また、読む為に必要なコンテンツは、インターネット上にある既存のニュース系サイトや個人のブログ記事、Twitterコメント、動画コンテンツです (ブロックチェーン上の記事も対象に含む)。ユーザーに良質なコンテンツを提供する為に、たくさんのコンテンツ収集と配信の仕組みが必要です。この辺りを中心に外部サービスに触れていきたいと思います。
ログイン認証・ウォレット
「ReadON」アプリを起動したときにログイン画面が表示されます。既にアプリを利用している場合は、1度ログアウトをしてから再起動を行うと表示されます。このログイン画面で利用されている機能を「Particle Network」のサービスで補っています。
どのようなサービスかというと、複数のログイン手段の提供と利用者専用のウォレットを自動生成するというものです。ログインの種類は、ソーシャルログイン、メールアドレス、電話番号、既存のウォレットなどがあります。
前提として分散型アプリケーション (DApps) を利用するには、事前にウォレットが必要です。特にブラウザーアプリの場合は。執筆時点では、まだ、ウォレット接続のみしか対応していないDAppsが多い印象です。その為、初めてweb3を体験するユーザーが、DAppsを使ってみようとした場合、まず「ウォレットを準備しましょう」から始める必要があり、プレイまでに手間と時間が掛かります。その問題を解決したサービスです。
また、自動生成されるウォレットは「MPC-TSS」方式を採用しており、MetaMaskのような「リカバリーフレーズ」や「秘密鍵」の管理が不要になっています。
詳細は、下記を参照ください。
他にもNFT関連のサービスやノードサービスを提供しています。マルチプラットフォーム (PC、iPhone、Android) の開発向けにSDKが利用できるので、開発者は、メイン機能の開発に集中できそうです。
コンテンツ配信 (収集)
「ReadON」では、国内・国外のweb3に関するニュースや記事、Twitterの情報を読むことができます。ところで「ReadON」アプリで表示されている記事データは、どこに存在しているのでしょうか?「ReadON」アプリで適当に記事を表示し、記事タイトルの下部を見ると英数字の文字列が並んだ表記があります。どうやら、元サイトのURLを直接参照せず、どこかのオンチェーン上に存在してそうです。
前提として、各記事には大きく2種類の特徴があります。
- オンチェーン
- ブロックチェーンに書き込まれた記事 (データを分散管理)
- 例) web3サービスのブログツール (Mirror・RSS3)
- オフチェーン
- ウェブサーバーに公開されている記事
- 例) wordpressで書かれた記事やtwitterコメント、YouTube動画
詳細な仕組みはわかりませんが、オンチェーン・オフチェーンに存在するコンテンツを「ReadON」側で収集し、その後、分散型ストレージにアップロード (配信) をしているようです。この分散型ストレージに「Arweave」のサービスを利用しています。「Arweave」自体がオープンソースプロジェクトのようです。
尚、コンテンツ収集の仕組みについては「Octopus」というシステムを使っているようですが、独自システムか何か不明だった為、割愛します……。
情報のアップロードにはトランザクションが発生する為、トークンを支払う必要があります。また、大量のトランザクションが発生した場合は、処理スピードが遅くなるという課題があるようです。(記事の作りによっては、短いテキストで構成されている場合もあれば、長文で且つ、画像と組み合わせた場合もあるので)
上記を解決しようとしたのが「everVision」のソリューションサービスです。
- 「everPay」サービス
- 決済機能
- 「Arseeding」サービス
- アップロード機能
- 「Arweave」へのゲートウェイ機能
上記を利用すると、通常「Arweave」に対する支払いは、専用のARトークンが必要ですがETHでの支払いが可能になるようです。また、ファイルを1つずつもしくは、まとめて分散型ストレージにアップロードすることも可能で、支払いとアップロードがシームレスにできるます。開発者向けに「Web3Infra」という開発キットが提供されています。
「everVision」では、他にもこの様な「Arweave」のオープンソースプロジェクトを支援するサービスの開発・提供をしているようです。
アプリケーション構築基盤
「MAP PROTOCOL」とパートナーシップの記事があったのですが、このサービスがどのように利用されているのか?一番悩みました (笑)。ある程度、ツールの機能と業務フローが想像できればここで使ってるのかなとアタリがつくのですが、これは、ブロックチェーン同士のネットワーク全体に影響するサービスの為「Amazon Web Serviceを使っています。」とか「Google Cloud Platformを使っています。」みたいなレベルの用途になります。
「MAP PROTOCOL」は「オムニチェーンプロトコル」のサービスを提供しています。聞きなれない言葉ですが、アプリ開発者やアプリ利用者の体験が変わると記載されていました。どういった体験が変わるのか?
そもそもブロックチェーンは、イーサリアム以外にBNBチェーン・ソラナなどいくつか種類があります。そして、それぞれのチェーンに対応した規格でスマートコントラクトを用意する必要があります (互換性を持っているケースもある)。また、使える暗号通貨もそのチェーンごとに用意されています。その為、複数チェーンを横断したサービス設計にするとアプリ開発者とアプリ利用者が不便になりそうです。
過去の記事で紹介した「Move to Earn」の「STEPN」は、複数のチェーンに対応をしました。イーサリアムでプレイする場合は、イーサリアム専用のシューズ (NFT) を購入して、イーサリアム内でレベル上げをします。BNBでプレイする場合もBNB専用のシューズが必要です。どのチェーンでもプレイ内容は変わりませんが、イーサリアム専用のシューズをBNBチェーンに持っていくといった横断ができません。
この様なチェーン同士のデータ移行・連携に伴う負担軽減を狙っているのが「MAP PROTOCOL」で、各チェーンの中継を自動的に行ってくれるイメージです。「オムニチェーンプロトコル」という名称は、このことを指していそうです。
「Read ON」は、現在開発途中です。その為、今後どのようなサービス設計になるかわかりませんが、多くの人に利用してもらうことを視野に入れているので、複数チェーンの拡張を見据えてのパートナーシップかもしれません。
分散型アイデンティティ (DID)
「Read ON」アプリをインストールして初期設定の段階で「ReadON Archive」を作成しました。これは、同梱されているウォレットのアドレスに紐づいて自動生成された譲渡不可能なNFTです。Soulboundトークン (SBT) とも呼ばれます。
「Read ON」をインストールした数だけSBTが存在し、個人それぞれの行動を記録するのに存在しています。Googleアクセス解析の導入に近いイメージです。
例えば、「ReadON」で読書をすると経験値が増えレベルが上がるのですが、その情報が紐づいていました。トピック別で管理されています。このNFTは「Arbitrum」で発行されているので「Arbiscan」で確認できます。
「ReadON Archive」自体は、外部サービスではなく独自に実装された機能だと思いますが、これと似た外部サービスを利用しています。「CyberConnect」と「MantaNetwork」です。何れも自身のウォレットアドレスを使ってSBTを生成するという方法は同じですが、特徴がそれぞれ違います。
CyberConnect (Link3)
- 「ソーシャルプロトコルサービス」と謳っています。例えば、TwitterやInstagramで新規アカウントを作成して、日々のことをつぶやいたり、誰かの写真に反応したりしますが、その様な匿名のIDと匿名のIDをccProfileで共通化できるイメージです。
- web3上のblogサービスやSNSサービスが徐々に増えてきていますが、どのアプリに接続してもccProfileと連携が可能であれば、すぐに同一のユーザーとして証明できます。
- 他にもCyberConnect独自のポイント制度があり、記事を投稿したり「いいね」をするとポイントが取得でき、抽選に参加できるといった、SNS活動を促進させるようなイベントを行っています。「ReadON」では、このポイント取得条件の部分が連携されているので「ReadON」アプリ内でSNS活動を行うとCyberConnect側でポイントが取得できます。
- ポイント取得に参加する場合は、先にCyberConnectのLink3サービスでプロフィールページを作成し、ファンクラブに参加する必要があります。
MantaNetwork
- CyberConnectに出てきたID部分をセキュアに管理する仕組みです。ウォレットアドレスの数だけ、無限にccProfileは、作成可能です。誰かのプロフィールを見たときにそのプロフィールが人間なのか?機械なのか?判別がつきません。MantaNetwork上でzkPassを生成すると以降は、ウォレット接続をすることなく本人確認ができるようです。
- 実際には、証明キーと呼ばれるもので本人確認ができるのですが、マルチチェーン対応になっており、今までは、都度、チェーンを切り替えるごとにウォレット接続が必要だったのが不要になるとのことです。また、証明キーへの接続には、アクセス元の接続情報を事前にホワイトリスト化する必要があり、許可されたものしか接続できないようです。
- zkPassを発行するにあたって、MantaNetworkのウォレットが必要です
両サービスの特徴が全く違いますね。冒頭のサービス俯瞰図では「GALXE」を記載していましたが、CyberConnectと類似のサービスです。「ReadON」との連携は、特になさそうですが、キャンペーンを「GALXE」上で行うことがあるので記載しました。
CyberConnectやGALXYなどキャンペーンサイトには、たくさんのウォレットアドレスが接続され、その情報が他人から丸見えということもあるので、ユーザー行動の把握とプライバシーを守っていく動きが、今後、益々重要視されそうですね。
ということで、如何だったでしょうか?
あくまでも筆者の勝手な妄想を描いてみましたが「ReadON」のみならず、色々なサービスが同時並行に進化をして、それらが連携し、利用者も増えているんだなぁということが身近に感じられました。
SNSユーザーとの接点が面白そうなので、また別の記事でツール紹介をしたいと思います。